特定秘密保護法の廃止を!


2013
年末に自民・公明両党とみんな・維新が共同で成立させた「特定秘密保護法」。

私たちは、出版に携わるものとして、一市民としてこの法律の即時廃止を強く願っています。この法律が成立したことが、「あの時の・・・」という痛苦の分岐点にしてはいけないのです。

 

この法律が、国民の権利を侵害しない・「普通に」暮らしている一般庶民にはなんら影響がない、と首相らは宣伝していますが、これは真っ赤なウソです。

 

まず、一般国民に何ら影響がない法律だとすると、誰を取り締まる法律なのか? ということになります。国家公務員でしょうか?自衛隊員でしょうか? 秘密の漏えいを罰する法律は、すでに存在しています。国家公務員法や自衛隊法で、漏えい罪にはそれぞれ罰則(懲役刑など)が決められています。では、この法律は? 国家公務員でも自衛隊員でもない一般庶民を罰する、もしくは罰をもって「知る権利」に縛り・脅しをかけるものを理解するのが「普通」です。

 

私たち国民の権利を侵害する法案だからこそ、地方公聴会も2回しか開かず、国会での審議もそこそこに強行採決したわけでしょう。知れば知るほど「国民には影響がないね」という理解が広がる法案なら、正々堂々と全国各地で公聴会を開き、国会で審議を積み重ねればよいのです。そうすれば、安倍内閣への支持が段々と高まっていくでしょう。それをせず、スピード審議で強行採決したのは、国民が法律の詳しい内容を知る前に無理やり成立させたかった、ということでしょう。

 

では、国民にはまだ十分に知られていないこの法律の恐ろしさとは、なんでしょう?

 

第1に、何が秘密かわからない、という点です。

この法律は、「特定秘密」となっていますが、正しくは「不特定秘密保護法」なのです。

何が秘密かわからないと、どんな問題があるでしょう? 

秘密に近づかない・秘密を知ろうとしない・秘密を聞きださない、などの自己防衛をはかることができません。

相次ぐでたらめ答弁で失笑を買った森大臣は(この人、弁護士らしい。世も末だ)、新聞に掲載されている「首相の動向も秘密対象」と言いました。こんなものさえ秘密なのです。では、いったいどんなものが? それがわからない。

ここで参考になるのが戦前の社会です。次のようなことが実際にありました。

1.     与謝野晶子の「君死に給うことなかれ」に線を引いて読んだ13歳の少女が、特高警察から殴る・蹴るの暴行を受けた(1943年)

2.     広島県呉で、宴会のときに写真を撮った料理人が軍機保護法違反で逮捕(1938年)。背景に軍港が写りこんでいた。

3.     北海道大学の学生が恩師の米国人に旅行先の見聞を語ったところ、軍機保護法で逮捕。敗戦まで牢獄にい、出獄直後に結核で死亡(1941年)

 

何が秘密かわからなくしておくと、誰にとって・どんな良いことがあるでしょう。

国民が国(お上)のすることに口をさしはさまなくなる、汚職や不祥事も知ろうとせず知っても問題にしなくなる、何が行われているかを知らなければ議員・首長を選ぶ基準さえなく金と地位を持った輩が選挙に勝ち続ける・・・・、彼らにとってみれば良いことだらけじゃありませんか。

 

「何が秘密かわからない」点で付け加えるならば、この法律に違反したと逮捕・検挙され、裁判にかけられても、逮捕理由・送検理由は明らかにされない。それも秘密だから。裁判の過程でも、何で逮捕されたかわからず、つまりは弁護もできない。逮捕されてしまえば、牢獄送りは必至。こんなとんでもない法律が、国民生活に影響ない、などとどの口が言うのでしょうか?

 

この法律の恐ろしい点は、第2に逮捕される範囲がとめどない点です。

実際に「秘密」を漏えいした人だけでなく、それを知ろうとした人(教唆)、友人と一緒に「情報公開をさせよう」と相談した人(共謀)、仲間を募って秘密を公開せよと迫った人(扇動)も、罰せられます。

石破さんは、「デモはテロ」と言いました。正直な人です。その通り。デモや集会は、彼らにとってみればテロと同じ。そのために、教唆・共謀・扇動を罰する、と書いているわけです。

デモ?集会?関係ないし! と思われる方もいるでしょう。

職場でセクハラ(強姦さえ)されたのに被害者のほうがクビに。ブラック企業の長時間過密労働で子どもが過労死・自殺(今は、公務員のブラック化も当たり前に)。国が認めた添加物や予防接種で深刻な健康被害。米軍・自衛隊のヘリが自宅に墜落し、子どもが焼死(1977年横浜市緑区で実際にあったことです)。こういうことがないと、言い切れますか?

お国のために、黙って泣き寝入りしますか? せめて何が起こったか、真実を知りたいと思いませんか? 

国を相手取って裁判を起こしても、この「特定秘密保護法」の条文通りに運用されれば、裁判にさえ国からの資料は提出されません。秘密ですから。

職場、つまり民間企業だったら関係ないでしょ? と思いますか? その民間企業が「特定秘密」を扱う企業である場合も多々あります(秘密の範囲に、文化庁や観光庁も入ってるんですから!)。また、こういう法律が大手を振ってまかり通る世の中では、すぐに民間企業の都合が悪い点も非公開になるでしょう。そのために、安倍首相はしきりに言っているのです。

「世界一、企業が活動しやすい国にする」と。それがどれほど恐ろしい世の中か・・・。

 

第3に恐ろしい点は、国会議員も逮捕され投獄される点です。

今の憲法ではそれは許されておりません(いえ、この法律そのものが憲法違反ですが)。だから、安倍内閣は「国会議員の不逮捕特権をはく奪する」ことを計画中です。

国会は「秘密会」となり、一切は闇の中。秘密会に出席した国会議員は、所属政党に帰って報告することさえ逮捕覚悟です。ましてや、国民に知らせるなど・・・。

秘密会さえ、政府のさじ加減ひとつ。秘密会に資料を出すかどうかも彼らが決めます。いやだと思えば、そこにさえ出てこない。

 

こんな法律で、いったいどんな世の中になると思いますか? 

政治はやりたい放題になるでしょう。

大臣や議員への賄賂は、横行します。贈収賄事件などの不祥事は、「国益に反する」「日本の国債の価値を下げる」などといくらでも理由を付ければ、公開されないし、暴いたら投獄できる。うまい汁を吸う企業・個人は、大手を振って賄賂を贈れます。バレないんですから。5000万円あげたって、何十倍にもなって返ってくるんですから。

 

国民は、疑心暗鬼で互いに監視し合うようになるでしょう。

おそらく近いうちに、戦前の「隣組」(または江戸時代の5人組)のようなものを作ろうと言い出すでしょう。大義名分はもちろん、「ご近所の助け合い」。本当は、お互いを監視し合い、足を引っ張り合うための組織です。

先ほど戦前の実例に挙げた、「君死に給うことなかれ」で暴行を受けた13歳の少女を思い起こしてください。彼女がその詩に線を引いて読んでいる、ということを彼女以外のだれが知っていますか? おそらくはクラスの友人もしくはたまたま発見した教員が、特高警察に密告したのです。でも、密告した人を責められるでしょうか? 知って黙っていたら、連帯責任を負わねばなりません。線を引いただけで少女に殴るけるの暴行を受ける奴らです。教員が黙認したら、そういう教育をしていたということで、死ぬまで殴られるでしょう。友人とて同じです。実際に、小林多喜二を始め多くの人が殺されています。

こういう社会にしたいでしょうか? 本気でそう思いますか?

 

こんな世の中にしたい! と熱望しているのが安倍首相ら自民・公明政権であり、もっとやりたい放題稼ぎたい経団連の連中・また日本をもっと屈服させたいアメリカでしょう。

 

最後に言いたいのは、安倍首相(橋下大阪市長も)は平気な顔でうそを言う、ということです。オリンピック招致の際に、国際社会の前で「放射能汚染は完全にコントロールされている」と、真っ赤なうそを言いました。秘密保護法が国民には全く影響ないというのも、完全なデタラメです。平気で堂々とウソを言うのは、ファシストの特徴です。

かのヒットラーは言いました。

「大衆は、小さな嘘より大きな嘘にだまされやすい。なぜなら、彼らは小さな嘘は自分でもつくが、大きな嘘は怖くてつけないからだ。」(アドルフ・ヒットラー)

 

歴史が証明している過ちをまた繰り返すのか? それではもう、「騙されました」とは言えません。「積極的ファシズム主義」になってしまうでしょう。

ですから、私たちは、この法律の廃止を強く望むのです。