哀しき語呂合わせ その3の続き
お店の宣伝看板に書いてあった、電話番号の語呂合わせとは!
みにくいほど うつくしい (醜いほど美しい)
「なんと、哲学的な表現やろ。よくぞ、そんな言葉に会うような電話番号があったなあ。いや、ここのお店の社長はんが、きっとそういうお人なんやろ。哲学とはあまり関係ない業種みたいやけど、ベレー帽をかぶって、パイプかなんかをくゆらせながら、木のイスに座って、日がな一日考えてるんやろなあ。
『ああ、人生とは何ぞや。進むべきか退くべきか、それが問題だ。人間は考える葦である』とか・・・」
でも、よく見ると、醜いの「み」の字と、その下の数字の「3」が手書きなんです。
これも不思議でしょう。ここだけ手書きにする意味が、何やら宇宙規模の遠大な思想の表現のようでもあり、ただ単に間違えたとも言え・・・。
そこで、はたとその原因を思いあたり、駅のホームで1人、笑うやら感心するやら、大忙し、ですがな。
さて、1文字1数字を手書きにした、その意味は!
東京の市内局番が、3ケタから4ケタに変わったからです!
私が東京にやってくる4年位前に、4ケタになったんですね。
我が社も、03-812-0281から、03-3812-0281に変わりました。
これ、4ケタにするほうはそれでええけど、されたほうは困りまっせぇ。
何がって、会社やお店・サービス業なんかで、電話番号を語呂合わせにしているところですがな!
ハトヤさんは市内局番とは違いますが、あれが市内局番の4126やってみはれ。
もし、4ケタの市内局番が5ケタになったとしましょう。
頭に3番が付いたら、34126=見よい風呂 になって、何やら覗き見趣味みたいになってしまいます。
頭に6番が付いたら、64126=蒸しい風呂 になって、サウナばっかりみたいやし。
8番が付いたら、84126=弥生風呂 になってしもて、3月の風呂ってなんやろ?
お雛さんでも並んでるんかいなと、誤解を受けますがな。痛手でっせ〜!ハトヤさんも。
話は横にそれましたが、つまり!
にくいほどうつくしい(憎いほど美しい)という極めてストレートな、シンプルな、だからこそ万民に受け入れやすい語呂を考えてはった社長はん。これで駅の看板も設置してるわけですわ。お金も掛けてます。
それやのに、そこへ無理無理、頭に3番を付けろっちゅう無理難題。
どないします?
しゃあないですがな。無理やり、3番をつけて、語呂も無理やりですわ。
「憎いほど」が「醜いほど」になってしもたんですな。
看板はどうします?
これまたしゃあないですわ。せっかく作った看板や。捨てるのももったいない。
地球環境にも悪い。再利用せな。
ある日、社長はんが自分で駅まで歩いていきますな。ペンキと筆を持って。
電車が無い時間ですから、物凄く早朝か、深夜ですわ。だれもおらん寂しい駅ですわ。
社長はんはたった一人で、自分のお店の看板の前に立ちますな。
「ああ。ええ語呂やったのになあ。いや、考えてもしゃあない。さっさと終わらせよ」
そう、自分を慰めながら、おもむろに看板に筆を入れます。
まず、市内局番に新しく加わった「3」番を書き入れます。
次に、・・・
「ちょっと苦しいなあ。無理くりやなあ。いや、しゃあない。さっさと終わらせよ」
そう言いながら、新しく書いた3番の上、「憎いほど」の「に」の前に、一文字書き入れます。
「み」と・・・。
こうして、その数年後、奈良から箱根の山を越えてはるばるやってきたあるおっさんが、発見するのです。
「醜いほど美しい」
という名文句を!
(完)
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